巻頭随想
新しい生命
森 茉莉
pp.9
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202480
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一つの新しい生命が,この世界におくり出されるためには,母親の苦痛をともなう.苦痛はひどくて意識を失う場合もあるし,生命を失う時さえある.
苦痛は長い時間がかかり,それが特別に長くて赤子が窒息して死ぬ場合もあるし,場合場合で,機敏に事を計らい,最善の処置をとらなくてはならない.母親というものは,新しい生命を生み出す輝いた歓びが光なら,それにともなう影のように,平行してついてくる,そういうあらゆる非常な場合の黒い影を危惧して恐怖するものである.
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