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妊娠中毒症対策の予算について
小西 宏
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1厚生省母子衛生課
pp.20-21
発行日 1962年6月1日
Published Date 1962/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202348
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わが国の妊産婦死亡の改善が諸外国に比して著しく遅れていることが多年問題とされてきました.これには医療制度の問題,経済的,社会的な諸種の事情など複雑な因子がいろいろとからんでいることと思われますが,従来の母子保健行政において,妊産婦に対する保健指導がきめ細かく個々の妊産婦に十分およんでいなかつたということも反省してみる必要があると思います.
厚生省としては,幼少人口の健全な育成をはかる基礎ないし予防的施策として2,3年前から母性保護対策の重要性に着目し,妊産婦死亡の最大の原因であり,また心身障害児の発生にも大きな影響をもつといわれる妊娠中毒症に対し,何らかの積極的な対策を確立すべく検討してきました.ところが,この疾患については,今日なおその本態が明らかにされておらず,さらにその症状が患者自身に自覚され難い疾病であることなどから,その具体的方策の樹立は必ずしも容易ではありませんでした.ご承知のように,妊娠した者は速やかに医師または助産婦の妊娠証明書を添え届出をしなければならないことに法律で定められてありますが,この励行は必ずしも満足な状態ではなく,妊娠5カ月で約1/3,7カ月で約2/3,9カ月を超えて漸く85%に達するというのが現状です.また一方,保健指導の体制の面では,現在の保健所は業務量がほぼ頂点に達しており,これ以上の新たな業務附加はできるだけ慎重にしなければならないという実情を看過するわけにもいきません.
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