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妊婦精密健康診査の徹底
昭和43年に厚生省が実施した母子保健実態調査によれば,妊娠中1回も健康診査を受けていないものが16%もいた。妊娠中の健康管理は安全分娩はもとより未熟児や先天異常児を生まないためにも不可欠のものである。
従来,妊婦の健康診査は保健所で,無料で行なっていたが,保健所は地域性もあって,すべての妊婦が利用できる便はなく,また妊婦は出産を予定する施設で健診を受けるのが一般であるため,一昨年から低所得者で初回妊娠のものに対しては一般医療機関で,公費によって受診できる制度をつくった。これを昨年からは,対象者の所得制限を大幅に拡大するとともに,初回妊娠の制限をはずし,全妊婦とした。所得制限の拡大とはA・B階層(生活保護世帯と被保護世帯ではないが市町村民税の非課税世帯)からC・D1階層(所得税年額0ないし4800円以下の世帯)まで対象者を拡げたこと。この一般健康診査と同時に,一般健康診査の結果さらに精密健康診査を行なう必要の認められる妊婦に対しては,これに要する費用についても公費負担で精密健診を実施することとした。健康診査の回数は一般健診が2回,精密健診が1回で,具体的には健康診査を受けるには一般健診票を保健所(事実上はほとんど市町村)でもらい,それを本制度の契約医療機関(大多数の産婦人科)に提出する。精密健診は一般健診の結果,異常が疑われる場合,妊婦または健診をした医師の申請(連絡)により精密健診票を得て実施されるが,この場合は医療保険が適用され,その自己負担分について公費負担となる。この妊婦精密健診については,保健適用の問題で日本医師会,大蔵省,保険局(厚生省)との間の調整に日時を要し,本年2月1日付で実施要領を都道府県に通知した。都道府県の実施状況は一般健診では43県(実施率93.5%),14政令市(48.2%),精密健診では10県(21.7%)3政令市(10.3%)で,軌道に乗るのは本年度から。
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