胎位胎勢講座・2
骨盤位分娩における児の予後
名取 光博
1
1東京都立築地産院
pp.41-45
発行日 1961年3月1日
Published Date 1961/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202091
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1.まえがき
医学全般からみるとき産科は極めて保守的な科であるかも知れない.しかし分娩に際し,母体を如何にして助けるかという時代から,母体は勿論児をも如何にして助けるかという時代え,更に今日の如く母児の生命を助けるだけでなく母児の将来をも考えて,母体の安全とその保護,児の将来の発育とその幸福を考えて生命の一瞬間というか,一時期をとらえての産科の時代えと変つて来たことを考えれば,産科は本来予防医学的であるべきであり,この観点からすれば最も進歩的な科であると言えよう.即ち私達が分娩介助に当つて常に忘れてならぬことは,母児の将来のことをも考える態度である.
新生児の予後一般について考えてみると,抗生物質が自由に使用できるようになり,輸血や麻酔技術の進歩で帝王切開の適応範囲が拡大され,仮死蘇生法に酸素を使用して行う人工蘇生器が登場してから児の予後は急激に良好となつた.社会的にも計画出産が実行されるようになつたこともあずかつてか,児の予後についての家族の関心は極めて深まつて来た.これと共に未熟児養育医療の普及は児の予後をますます良好なものとしている.
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