母子健康センターだより
鳥取県若桜町
伊藤 幸枝
pp.30-31
発行日 1960年11月1日
Published Date 1960/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202020
- 有料閲覧
- 文献概要
鳥取市と言えば全国の皆様は,あああの火事や地震で何度も家を失つたところだと思い出して下さると思います.今ではそのお蔭と言えば変な言い方ですが全戸耐火建築と言う全国でも例の無いモダンな新装鳥取市として誕生,温泉の町としておとずれる観光客をおどろかせております.その鳥取市の玄関,鳥取駅からバスで1時間半,或いは汽車で1時間近く東南に入れば,終点駅が若桜です.町と申しましても,大半は山又山にかこまれた山間僻地で人口9,500人,戸数1,800戸,面積200m2で,隣は兵庫県に接しております.その若桜町のほぼ中央の国道筋に若桜町自慢の母子センターが,昨年4月に完成し7月から開所しております.母子衛生の最前線で活動している私は,農村婦人の生活を身近に眺めながらどんなに世の中が進歩し文化が発達しても母と子供の福祉の無い社会は文化国家とは言えないと考えておりました丈に,この母子のしあわせの為に母子健康センターの設立されることを聞き,この大きな飛躍に胸をおどらせました.然も県下でたつた1カ所の場所を若桜町に選定して下さつた県及び保健所の御厚意と相当の経費の必要な事を承知で喜んで引受けて下さつた町長に対し,心から敬意と感謝をいたしました,そして完成されるのを千秋の思で待つておりました.然し愈々完成し,実際に運営してみますと.どうしてどうして,最初考えていたような生やさしいものではない事を知りました.
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.