今月の言葉
働く婦人と24時間の生活
谷野 せつ
1
1労働省婦人少年局
pp.5
発行日 1960年8月1日
Published Date 1960/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201955
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朝は楽しく目をさまし,昼はよく働らき,夜は静かに休養する.それは人間が誰でもねがつている極くあたりまえの生活である.しかしこのごくあたりまえの生活であつても,本当にそれが人間らしくあるためには,その中味となるところのことが問題であつて,それがまた,いつもよく人間らしく充たされたものでなければならない.
日本の婦人の生活には,朝から晩までという言葉がある.これは婦人の生活がいかにも多忙であることを意味している.家庭の中で,家事にたずさわる一般の主婦については,家事という全く区切りのつきにくい雑事に追われて,そこには客観的に自分を見出すことをさえ,忘れさせている問題がある.商家や農家に働く主婦,さらにまた,職場に働く婦人については,収入を得るためのはげしい労働の負担も加わるので,その24時間の生活にきざまれるそれぞれの時間のもたらす意味は,一層重要であり,又複雑である.主婦がどんなに夫を愛し,子供達の倖せをねがつていても,家族の幸福を得るためのよき活動が,家庭のうちと外とに伴わなければ,主婦のねがいは生かされない.働く婦人が健康で,仕事に能率をあげるためには,短縮された時間の上に,規則的な生活時間の積み上げが工夫され,そこに私生活の個性とよき休養が得られるものでなければならない.それはことに宿舎に住む働く婦人の場合,重要である.
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