今月の言葉
男児出生
竹内 繁喜
pp.5
発行日 1958年5月1日
Published Date 1958/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201462
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「○○氏 入院中の処規則正しい陣痛の発来により午前1時7分,第一後頭位で男児分娩,3420g.母児共に異常がない.三回目に始めての男児で産婦は非常に喜び感激させられた.」これは今朝の夜勤日誌の一節であります.この短かい文章の中に私達に考えさせる二つの問題が含まれております.
第一は根強く滲み渡つている家族主義です.昔から日本では男児の出産が非常に喜ばれ,逆に米国等では女児の出生が好まれていましたが,概して男児を喜ぶのは封建的な国々の特徴であつたようです.2〜3年前にモナコの王妃になつたグレース・ケリーという女優さんは是非共男児を生まねばならぬ立場にあつたため,結婚の当初からその出産が注目の的になりました.結婚後1年目の出産が王女であつたため,又々二度目の出産が話題の中心となりましたが,今年早々王子を出産したためやつとこの問題には終止符がうたれました.ところが最近近東アジアのある回教国の王妃の離婚問題が世界の注視を浴びています.この国でも王妃は是非共男児を生まねばならないのですが,最初の王妃は3年たつても妊娠しなかつた為離縁させられ,二度目の現王妃は女児は生みましたが児男が生めない為に離婚話が持ち上つているというのです.
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