随筆
欧洲・アイスランド族行記(3)
瀬木 三雄
1
1東北大学
pp.34-40
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201402
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1.夕陽を追つて北大西洋を西に
7月22日の夕方,コペンハーゲンの空港からいよいよ宿望の地,アイスランドに発つ.カテガツト海峡をすぎてオスロー峡湾が眼下に開けてくる.間もなくノールウエーの首都オスローに着陸休憩.この国は19年前に来たときハンメルフエストからベルゲンに至る大西洋沿岸都市を訪ね歩いたことがあるが,オスローははじめてである.ホルメンコンのスキー場で有名な美しい北欧の町である.
空港ビルの中でビールをのみ乍ら,心の中で暫し欧亜大陸との別れの感にしたる.品の良さそうな子供ずれの一夫婦が私を眺めて国籍の判断がつきかねている様子.「失礼ですが,どこの国から,どちらえ?」遂に私に聞いて来た.「日本からアイスランドへ」この夫婦はアイスランド人であつた.「おおそれははるばる遠い路を!」私はそれまで,アイスランドがそれ程遠い国とは思わなかつたが,この言葉を聞いて,何だか遠い国へ行くような気がして来た.
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