講座
婦人ことに妊産婦の冷え症
竹内 繁喜
1
1東京都立築地産院
pp.20-23
発行日 1957年4月1日
Published Date 1957/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201244
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まえがき
日本の婦人の間に,昔から言い古されている言葉に「血の道」と「冷え」という代表的な言葉があります.血の道とか冷えとかいうものがどんな種類の異常か疾病かも判らぬままに,この二つの異常は婦人に附きもののように長い間考えられて来ました.そして大概の場合女性のあらゆる疾患或いは症状がこの二つの言葉で代表されて来たようです.子宮癌の初期で性器出血がある場合でも「どうも血の道らしい」といわれ,淋菌性尿道炎で尿意頻数がある場合でも「冷え込んだらしい」という言葉が用いられました.
血の道の話はいずれ述べる機会があると思いますが,とにかく「婦人は冷えるもの」という考え方が今日迄の日本婦人の頭にこびりついて来た事は事実です.近頃は尠なくなりましたが,冬期ともなると赤い毛糸の都腰巻きが巾をきかせたのも極最近迄の事でしたし,又洋装が盛んになつた現在でも,下町あたりの婦人は男の使うような股引きやズボン下を盛んに利用しています.
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