講座 臨床検査・2
呼吸と脈搏
塚原 進
1
1関東逓信病院臨床検査科
pp.56-60
発行日 1957年3月1日
Published Date 1957/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201235
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呼吸と脈搏とのつながり
人が倒れている.死んでいるかも知れない.といつた場合に,傍に行つてみると呼吸をしているのがわかれば死んではいないことがはつきりする.呼吸していなければ脈をふれてみる.脈があればまあ安心だということになる.このように呼吸と心臓の搏動とは昔から「生命の象微」として考えられて来たことは,御存知の通りである.
呼吸していること,心臓が脈搏つことをもう少し科学的に考えてみよう.およそ生物と名のつくものは全て呼吸をしている.動物でも植物でも,バクテリヤでもそうである.呼吸というのは一口でいえば,からだの中に酸素をとり入れることでありそのとり入れた酸素を命の維持に役立たせたあとの炭酸ガスと水蒸気を棄てることをいつている.ところが酸素の必要なのは程度の差ことあれからだの全ての部分なので,1個かせいぜい数十個の細胞の原始的な生物はまわりから酸素を簡単に全部の細胞にとり入れることが出来るが,少し大きな形の生物,特に動物では酸素をとり入れる器管と,とり入れた酸素をからだのすみずみまで分配する器管がそなわつている.酸素をとり入れる器管が肺で,それを分配する器管が血液と心臓及び血管ということになる.肺はゴム風船のようなもので,空気を入れてやれば伸びやめればひとりでに縮んでしまう.この肺は二重の肋膜の袋でつつまれていて二重の肋膜の間には何もないので,人工気胸の時に空気を入れたり出来る.
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