講座
小児科医から助産婦へ一言
高橋 悅二郎
1
1愛育会病院小児科
pp.20-23
発行日 1955年11月1日
Published Date 1955/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200944
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新しい生命の芽生え,出産という事は,待ちこがれていた親達にとつてどんなに不安に満ちた時であり,且つ如何程大きな喜びに満ちた時でありましようか.出産直前の両親の苦痛心配大きな健康な子が生れますように,無事に生れますように.……いろいろの事を考えながら,父親は分娩室の廻りを行たり来たり.--丁度動物園の熊が同じ場所をあつちへ行つたり,こつちへ来たりするものと同じような恰好で.--それが助産婦の落着いた,明るい張りのある「お目出度うございます.立派な赤ちやんがお生れになりました」という声を聞いた途端,目を輝やかし相好をくずし,全く喜びの絶頂というのはあの時を指すのでありましようか.はたでみていても第三者として,恩わず喜びがこみあげて来ます.勿論この様な幸福な場合許りとは限らず,悲しむべき事態に直面する事も時時ありますが,その際の助産婦の態度,それは如何程産婦やその家族達に大きな影響を与えるでしようか.
細心の注意,てきぱきと馴れた手つきの産婦や新生児の取扱い,明るい落着いた態度,実に頼母しく,快よく,心から敬意を表します.そうです.小児科医として助産婦の新生児に対する適切な処置--例えば臍帯結紮,切断,口腔,眼,耳孔に対する処置,沐浴身体測定着衣,クレーデ氏又はペニシリンの点眼,保温,体位,感染予防,栄養に関する注意等--経験ある助産婦の行つているのをみると特に申す一言も殆どありません.
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