講座 分娩に関する諸診断法・1
分娩開始の診断
後藤 直
1
1日大
pp.19-21
発行日 1954年10月1日
Published Date 1954/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200704
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まえがき
妊娠してからお産をするまでの期間は動物によつて違うが,同種動物についてはそれぞれ一定している.例えば鼠などでは約3週間となつており,人間では約40週間,即ち280日となつている.このように一定の期日がくると必ずお産が始まるということは誠に不可思議の感を起させるが,学問的には必ずお産の動機となる一定の変化が身体の中に起つているはずである.従つて昔から今に至るまで多数の学者が分娩開始の理論というものを研究してきたのであるが,今なおその本態をつかむとが出来ない実状である.結論は何れも想像又は假定にすぎない,しかしこの理論も何れはつきりする時がくるに違いない.その時こそは色々な化学的検査(尿,血液,その他の体液などの)によつてお産の始まるのを予知することができるようになるかも知れない.
診断の方法としてはまず妊婦に質問して色々の症状(自覚症状)を尋ねることが必要である.そして医師や助産婦は自ら妊婦を診察してその所見(他覚症状)を確かめなければならない.この自覚及び他覚症状によつて分娩開始の診断の定まるのである.尚を分娩に関するすべての知識,殊に分娩の前驅症状を心得ていなければならないことは勿論である.
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