短歌のまどい
芽ぶくもの
美山 藤野
pp.54-56
発行日 1954年9月1日
Published Date 1954/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200693
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婦人が自分達の一生を顧みて最も眞剣であつた時といえば,一人の人間を生みだす時の無我の境地でありましよう。何か大きな力が自分を支配して嚴粛なこの事実に対して,あさはかな虚栄もなければ虚僞もない,切迫してくるものに全力を注ぐとき,新しい生命が苦しみの中から喜びを謳歌しつつ生れてまいります.それは何ものも犯すことのできない崇高なもので,お産をした婦人のもつ特権的意識というものでありましよう.今月はこの方面の歌を調べてみました.雨宮雅子氏の芽ぶくもの気配身近に感じいてみごもらむことひそと思えり
たはやすく子を産むという人のまえ疼くものあるわが薄き胸
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