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何んと勝手な話でしよう
野村 スゲ
pp.49
発行日 1953年11月1日
Published Date 1953/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200488
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受胎調節の反対,どうしたら早く妊娠するでしようか?と一人の婦人が涙を流して眞劍に相談に来られた.お話を良く伺うと,昨年夏5才の男兒を自動車事故で亡くされて妊娠を早く望んでおり,同年春妊娠5カ月で,最初某産婦人科医に人工早産を相談したところ先生は「5カ月では遲いから生みなさい」といわれ悲観して帰り次には病院を訪れこゝでも「無理である」といわれて諦めて帰宅,数日後3回目の婦人科医に無理に依頼して手術を受けたが,現在このような事に直面して淋しさに子供を欲しく,相談に来られた由.
以上の話を伺つて,助産婦の私はこう答えた.「2回も妊娠されておられるのですからきつと妊娠するでしよう.その時にはボーヤと赤ちやんとを2人一緒に生む位の気持で時期をお待ちなきい.又あせる事が反対に不妊の原因となる事さえあるといわれますから」1週間か2週間位の別居も効果があるとある先生が話された事を思い出し私は話した.ところが婦人は罪な事をしためですからもう子供は一生できないかも知れない?3度目の先生があの時前の先生方のように手術を断つて下されば良かつたのに,今その子が2才になつているのにと一人言のようにいわれて帰つていつた.私は一日も早く妊娠させて下さいと心から神に願つた.この私の願いと婦人の言葉と,どちらを神様は取上げて下さる事でしよう.
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