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抱負以前の抱負を語る
横山 フク
1,2,3,4
1日本看護協会
2助産婦部会
3参議院厚生委員
4厚生省助産婦試験審議会
pp.46-47
発行日 1953年7月1日
Published Date 1953/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200391
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まだ,当選したばかりの直後のことですし,参議員議員としての抱負をお話しするにしては,時期が早いと思つています.それですから,抱負ということでは何もお話できないのですけれども,ただわたくしは,このたび,皆樣のご盡力ご援助で,非才にもかかわらず,当選させていただきまして,本当に感謝しているのでございます.
選挙というものは,苦しいものです.これは,当選した瞬間ですら苦しいものです.何が苦しいといいましても,自分のような無能無才な人間が,はたして,皆樣のご期待に添えるような仕事ができるかどうか,それを考えると,あまりにも責任が大きく,重く,体が緊張でしめつけられて行くような気がいたします.このしめつけられて行くような緊張感というのは,開票結果が発表されている最中にも身に沁みて感じたものですけれども妙なもので,わたくしは,自分の票数がぐんぐん上つて行くのを知らされながら,実をいいますと,ちつとも嬉しい気持は覚えなかつたのです.嬉しくないというのではないんですけれど,嬉しい,といつて表面的に喜んでいられるようなそんな單純なものではありませんでした.わたくしは,はつきりいいますと「これは大変だ」「いよいよ大変なことになつてくる」というように,考えていたのです.何が大変かといいますと,自分の票数が上昇線を辿つて行くということは,とりもなおさず,自分の責任量がそれに応じて上昇して行くということだつたからです.
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