書評
—竹村マヤ著—歌集あかしやの花
牧
pp.18-19
発行日 1953年3月1日
Published Date 1953/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200297
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大部分の読者はご存知と思うが作者竹村まやさんは看護協会の北海道支部長をしていられる。この歌集は竹村さんの30余年に及ぶ作歌生活の中から,昭和年間のそれを中心として約600首を自選されたものである。
一読して感じられるのは,華麗,絢爛,人の目を奪うと言う樣な作風ではなく,むしろ地味にと言つてもそこには作者の繊細な,銀糸の光る様な感じ方が隨所にきらめいていて,その美しさに感歎する所が多い。たゞ対象に食い下るべきもう一歩の努力を,美しい詠歎に溶かし去つて歌う—それはそれで慥に美しいのだが—のに,物足りなさが感ぜられないでもない。それはそれとして30年に及ぶ作歌の道を孜々として歩んできた人には,それだけの実力もあり歌もその邊のかけ出し歌人とは本質的に違う秀れたものを持つている。作者に敬意を表する。と共に短歌に興味を持たれる方に一読をおすゝめする。
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