講座
妊娠中毒症の知識と保健指導の要點
新田 ユキ
1
1東京都立築地産院
pp.23-25
発行日 1952年2月1日
Published Date 1952/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200034
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1.保健指導の重要性
妊娠中毒症,分娩時異常出血,及び産褥熱この3つの問題は,世の母親達にとつて,常にその生命と幸福をおびやかす重大な事柄です。人類の進歩は,このいまわしい病氣を母親の世界から消すために,次々と救いの手を向けて來ました。化學療法剤や抗性物質の發見は,ゼンメルワイスの昔に比べて,産褥熱の猛威に隔世の感をいだかせてくれます。又分娩の時起る出血がいかに恐るべきものであるかという事も,私達は數多く經験させられて來ました。然しこれも設備の改善や,連絡交通の發達が,現在随分この危險から,母親達を救いつゝあります。さて最後に妊娠中毒症については,數多くの問題を私達に與えております。今なお流死産の原因,母體死亡の原因,新生兒死亡の原因等で斷然第1位を占め,又症状の輕重はあつても全妊婦の約10分の1が罹患すると言われております。我國で長い間かゝつて減少しなかつた妊娠中毒症死亡率は,アメリカでは1940年から1945年まで6年間で,公衆衞生の發達と共に殆ど半數にまで減少させて來ております。この點我國でも最近妊婦保健指導の強化が叫ばれ,私達は妊娠中毒症に對し有效治療藥の出ない今日,尚一層適切,效果的な保健指導に依つて,妊娠中毒症豫防及び惡化防止に,世の母親と共に努力したいと思います。
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