巻頭言
キセキ
高橋 哲也
1,2
1順天堂大学保健医療学部
2順天堂大学大学院保健医療学研究科
pp.1127
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203253
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リハビリテーション医療に長くかかわっていると,ときに「キセキ」に遭遇する.筆者が巡り合った「キセキ」は,胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術後に脳梗塞を併発した患者さんとの「キセキ」である.
術後早期からリハビリテーションが開始され,身体機能は少しずつ回復し平行棒内で安定して立てるまでになった.退院後もリハビリテーションは継続され,ご家族の献身的なサポートもあり,なんとかT字杖で立位保持が可能な状態にまで回復した.とは言え,意識レベルのわずかな低下はリハビリテーション開始当初から遷延し,挨拶を交わすことはできるものの,ご自身から何か話しはじめるようなことはほとんどなく,矍鑠とした術前の状態にはなかなか戻らなかった.しかし,筆者の異動が決まり,リハビリテーションを担当する最後の日に小さい声ながらハッキリとした口調で「いままでありがとう」と語りかけてくれたのだ.筆者はこのときほど泣いたことはない.本人とご家族の努力の「軌跡」にリハビリテーションの神が「奇跡」を起こしたと思った.リハビリテーションを通じて,この患者さんとご家族に出会った「奇跡」,そしてこの感動に巡り合った「奇跡」にいまでも感謝している.
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