Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「Noiseノイズ」—磁場としての「秋葉原」と貧困と格差の時代を生きる若者たち
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.85
発行日 2020年1月10日
Published Date 2020/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201861
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社会の矛盾や暗部,その背景にある経済構造などを視野に入れ,告発する作品は「社会派」として括られる.世界的にヒットした直近作品では,金持優遇に対する底辺からの異議申し立てを描いた「ジョーカー」がこれに当たる.日本に目を転じれば,インディーズ系からインパクトのある社会派作品が生まれている.新鋭・松本優作監督による「Noiseノイズ」だ.松本の言によれば,「15歳のときの親友の自殺とテレビに映し出された秋葉原無差別殺傷事件がリンク」して,「すぐさま脚本を書きはじめ8年をかけて映画を完成」させたとのこと.本作は,秋葉原という磁場に引き寄せられる3人の若者とその家族の物語.
2008年の秋葉原無差別殺傷事件で母親を亡くした桜田美沙(写真)は,怒りや苦しみを処理できない父親の暴力に晒されている.美沙は,母親の幻影が浮遊している秋葉原に身を置くことを心の支えとし,地下アイドル活動に励みながらJKリフレ店で働いている.
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