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実践講座 論文に多用される多変量解析法・1【新連載】
総論
Overview
奥田 千恵子
1
Chieko Okuda
1
1横浜薬科大学医療統計学
1Section of Medical Statistics, Yokohama College of Pharmacy
キーワード:
多変量解析
,
研究デザイン
,
交絡因子
Keyword:
多変量解析
,
研究デザイン
,
交絡因子
pp.547-552
発行日 2015年6月10日
Published Date 2015/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200264
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はじめに
例えば,簡便な方法で筋力と運動能力の関係を調べたいと考えて,何人かの患者に協力してもらい,握力と歩行速度を測定したとしよう.握力が下がるに従って歩行速度も下がるという関係がみられれば,握力を全般的な筋力の指標として運動能力の変化を予想するスクリーニング検査などに利用できるかもしれない.
だが,期待したような結果は得られなかった.
握力や歩行速度の測定方法が正確性を欠いていたためだろうか? あまり機嫌のよくない患者が普段の能力を発揮してくれなかったからだろうか? それとも,データを採らせてもらった患者数が少なくて信頼性に欠けるからだろうか?
もちろん,事前に測定機器の較正を行い,対象からインフォームド・コンセントを得て,十分なデータ数を確保することは臨床研究の基本である.しかし,これらの条件が満たされているからといって,安易に研究をスタートさせてはいけない.
研究で得られた結果は,誰が,いつ,どこで行っても再現できるものでなければならない.そのためには,1.研究目的に合った研究デザインを選び,2.研究デザインに合った方法でデータを収集し,3.研究デザインやデータの特性に合ったデータ解析法を用いなければならない.いずれかのステップで選択を誤ると,科学的に誤りのある,あるいは臨床の場でほとんど役に立たない結論を導いてしまう.
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