書評
宮岡 等,内山登紀夫 著「大人の発達障害ってそういうことだったのか」
広沢 正孝
1
1順天堂大大学院・スポーツ健康科学研究科
pp.978
発行日 2013年10月10日
Published Date 2013/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110284
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近年,成人の精神科医療の現場では,発達障害をもつ患者に出会う機会が多い.そればかりではない.大学のキャンパスや職場においても,発達障害者と思われる人たちへの対応に苦慮しているスタッフの声をよく聞く.主に成人を対象としてきた一般の精神科医も,もはや発達障害の概念なしに診療を行うことが困難になってきているのであろう.本書の著者の一人である宮岡等氏は,この状況を幕末の「黒船来航」に例えている.それほどまでに,(成人の)精神科医にとって発達障害は忽然と現れ,対応を迫られても,その具体的なイメージが浮かびにくい対象なのかもしれない.
本書は,発達障害に戸惑いを覚えている精神科医や医療関係者の立たされた状況をくんで編集されたものである.どうしても発達障害に対して不安や苦手意識をぬぐいきれない精神科医(医療関係者)には,どのように「黒船」に対する自身の臨床のスタンスを構築し直せばよいのかといった,そもそもの視点を教えてくれる.この点が,既存の「大人の発達障害」をめぐる書籍や雑誌との大きな相違であるといえよう.
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