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はじめに
近年,脳卒中はわが国の死亡原因の第3位である.脳卒中の死亡率は減少しているものの有病率は低下していない.脳卒中患者は,治療の進歩などから脳卒中による死は免れても,軽度から重度の障害を抱えている患者数はむしろ増加していると考えられる.また,高齢化の影響から,リハビリテーション科に脳卒中後のリハビリテーションのため入院してくる患者も,高血圧,糖尿病,心疾患,呼吸器疾患などを多数合併している場合がほとんどである.高齢者の特徴としては,個人差が大きく環境に対する順応性が低下し,複雑な動作ができなくなり,80%以上が慢性疾患を有することから1),当然のことなのかも知れない.
脳卒中の患者に効果的なリハビリテーションを行うために,里宇は2),併存疾患(comorbidity)の評価が重要であるとしている.併存疾患とは,指標疾患とともに存在し,予後や機能に障害を与えうる疾患のことであり,リハビリテーションの立場からは,原疾患の危険因子,生命予後,機能予後に影響を与えるもの,機能的制約や運動負荷の制約をもたらすものなどに分けるのが実用的であるとしている2)(図).
東京慈恵会医科大学の4付属病院で,平成元年から平成5年までの5年間で運動療法は371,240回行われており,そのなかで運動療法中2例の死亡例があった.2例とも全く予想できなかった突然死であった.さらに,幸いにも死亡に至らなかったが訓練室で緊急に処置が必要であった例は,意識障害(低血糖発作を含む),胸痛,呼吸困難,不整脈,痙攣発作,転倒,骨折であった3).このようなことを踏まえて,脳卒中患者のリハビリテーションにおけるリスクへの対応として,本稿では高血圧,糖尿病,痙攣発作,心疾患,転倒・骨折をあげて述べることにする.
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