Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
「山月記」再考―障害と悔恨
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.483
発行日 1999年5月10日
Published Date 1999/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108977
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中島敦の「山月記」(昭和17年)は,盛唐の末期,詩人になりそこねて虎になったという男の話だが,この作品は,障害と悔恨の問題を考えるうえでも示唆的な物語である.
この作品の主人公李徴は若くして科挙に合格し,高級官僚としての道を歩んでいたものの,詩家としての名声を後世に残そうと,官吏を辞めてひたすら詩作にふけった.だが,文名は容易に上がらず,生活は日を追うて苦しくなるばかり.生活の必要に迫られた李徴は,下級官吏として復職するが,その一年後,遂に「発狂」して,行方不明になるのである.
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