巻頭言
発達障害概念の再考
山崎 晃資
1
1目白大学大学院生涯福祉研究科
pp.736-737
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101675
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最近,「発達障害」が過度に注目され,操作的診断基準による安易な診断が行われるようになり,発達障害を一括りにとらえる傾向が強まっている。さまざまな学会で発達障害にかかわるシンポジウムが持たれることが多くなったが,発達障害という概念を真正面から論じ,問題点を明らかにしようとする試みは不十分といわざるを得ない。さらに,医師や専門家が「臨床へのためらい」や「臨床への畏れ」を持たなくなってきたことも気になる。短時間の面接や行動観察で,「自閉症」,「アスペルガー症候群」,さらには「発達障害」と安易に診断・評価するようになった。
いうまでもないことであるが,子どもの臨床は,発達歴を可能な限り詳細に調べ,時間や場所を変えて何度も行動観察をし,家庭・幼稚園・保育園・学校などにおける子どもの状態を可能な限り聞き取り,その子どもの理解を深めていくものである。ついでながら,「診断(diagnosis)」とは語源的に「知識のすべて」という意味であり,臨床家の知識と経験を総動員させて,その子どもの理解と対応を検討することである。その意味からは,医学的診断,心理学的診断,教育学的診断,福祉的診断などがあるはずである。「私は医師ではありませんので“診断はいたしません”」というノン・メディカルな専門家の話をよく耳にするが,それは責任回避または逃げ口上である。専門家としての自分の専門的立場に立った子どもの理解・見立て・評価などをきちんと述べるべきである。さらにいえば,医学的診断分類をつまみ食いすべきものではなく,それぞれの専門領域における診断分類体系を整えるべきである。
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