スコープ
僕の留学体験記―その1;アメリカ編(University of Washington)
前島 伸一郎
1
1和歌山県立医科大学
pp.1113-1115
発行日 1996年11月10日
Published Date 1996/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108249
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WHAT'S留学FOR?
私は英語が大の苦手である.確かに中学のときは英語に自信もあったし,クラスでもトップのほうであった(それでなければ医学部には入れまい!).ところが,高校に入るといきなり英語が難しくなったのに気付かず,嘗めていたものだからその成績たるは悲惨なものであった.大学を決める際には,なるべく英語の比率が軽くて,問題の易しいところを選んだくらいである.それでも大学時代,英会話を勉強しようとしてベルリッツに通ったが,3回で挫折した.卒業後,入局してから毎週のjournal clubが苦痛で仕方なかった.何しろ,英文論文の数行を訳するのに3時間はかかったのだからハンパではない.
そんな私が留学を決意(?)したのはいくつかの理由があった.第一に自分が得ているリハビリテーションの知識が果たして一般的なものなのか(別に恩師のD教授を疑っていた訳ではないが),世界との隔たりがあるものなのかどうかを知りたかった.第二に国際会議で外国人と討論できない悔しさがあったからであるが,言葉も含め外国人に慣れたかった.私はこれまでに国際会議で10数回発表したことがあるが,ほとんどがポスター発表で,近くに見物人が来ると逃げ回っていた!私のような田舎者に多いことかもしれないが,外国人が前から歩いてくると,つい反射的に後退りしてしまう.この感覚は都会人には分かるまい!どの外国人をみても皆,同じ顔に見えてしまう私にとって,留学を決意するのは,並大抵な勇気ではなかった.まさに「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の雰囲気であった.
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