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はじめに
「リハビリテーション医学の研究の特徴は何か」という質問への答としてこの小論の内容は不適切である.しかし,少なくとも「研究」と名のつくものに気を配っている仕事柄,多少は役に立つことを読み取って戴けるかもしれない.「これから始めようとされている方の参考になるように記しておきたい」と思っていることを書くので,気楽に読んで戴きたい.
研究をなぜするか?これは人によってそれぞれ異なった理由があると思うが,それをはっきりと認識すること.できればノートに書き留めておけば後々参考になる.立派な研究器具を買ったので,それを使ってひとつ何かやりたい,というのであれば,何故その器具を買ったか?にも依るだろうし,器具が入荷した時には,発注した人が辞めていた,ということもしばしば耳にする.それが数億の値段であれば放っておく訳にもいかない.あるいは学位請求のための研究をするというのもある.学位請求のための研究はそれを指示する指導者の目論みがあり,どのように結末をつけるか,まで先を見ていることが多いので,途中で行き詰まって立ち往生することは少ない.
研究の動機として「何かに心を奪われる」と言う人が少なくない,これこそ研究の動機としては最も純粋なものかも知れない.しかし何が純粋なのか,その判断の基準を示せ,と言われると,全く感覚的だった,と白状せざるを得ない.
費用の掛る研究をするには,何処かから研究費を調達せねばならない.研究費を出してくれる各種の基金があるので,面倒がらずにそれらに応募することも必要になる.しかし研究費の全く無いところで研究を始めることもできる.以前何かに書いたことを繰り返すようになってしまうが,敢えて記してみる.
私事だが前の職場では研究費なんぞ一文(円?)もくれなかった.機能訓練の研究を計画し,20kg重から120kg重の力を計測したかったので,測定器を作ることを思い立った.ひずみゲージを使えば測定器は作れるが,そのためにはひずみ計を手に入れねばならない.当時の値段で15万円ほどしたので買うには高すぎる.図書館で本を読んでみると意外と簡単な構造なので試しに作ってみることにした.バランスを採るための電流計はテスターで間に合わせ,ボリューム1つ,120Ωの抵抗4つ,ターミナル8個,電池のケース1つを無線屋さんで買った.はっきり覚えていないが700円程だった.ひずみゲージは10枚入り2,000円,ゲージ用ターミナル1箱,瞬間接着剤は買った.肉厚の金属製の直径5cmのチューブが建設現場に捨ててあったのを,わけを話してもらってきた.日曜大工の店でフック,ウォッシャー,固定用のボルト等を買ってハンダ鏝や金属用鋸,手回しドリルを振り回して4ゲージの筋力測定器を作った.起電力が電池によって異なること,湿気に弱いこと等に気をつければ,十分使用に耐えた.ひとつ成功すると角度計,呼吸計(呼気と吸気を区別するのみ)等,次々と派生した.さて話しを次に進めたい.
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