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第9回アジア・太平洋地域リハビリテーション会議は,平成2年10月26日から30日まで北京で開催された.この会議の母体となる国際リハビリテーション協会(Rehabilitation International=RI)は,ニューヨークに本部を置く国際団体である.RIには84か国,135団体が加盟しており,我が国から日本障害者リハビリテーション協会および日本障害者雇用促進協会が加盟している.RIの事業は,障害の原因調査と予防,障害者へのサービス,障害者の権利保護推進,障害者の障害者団体の利益についての国際レベルでの主張,および情報交換のための国際会議開催などである.国際会議はちょうどオリンピックのように4年ごとの世界大会と,その間に地域会議が開催される.今回のアジア・太平洋地域会議には,主題として「参加と平等」が掲げられており,分科会テーマとしては1)立法と政策への政府のかかわり,2)特殊教育政策,3)障害予防とリハビリテーションに於ける優先すべき研究,4)重度障害者雇用促進の具体策,5)障害者理解促進のためのマスメディア利用,6)バリアフリー・デザインとモービリティー,7)障害者が完全な家庭生活を送るための授助,8)障害者のスポーツ,レクリエーション,文化活動への参加,が挙げられていた.またセミナーとして,コミュニティー・ベースド・リハビリテーション,自立生活,義肢と装具,癩患者の治療,東洋医学があった.日本からはリハビリテーション専門家,福祉関係者,障害者など,総勢60名近くの参加者があった.
筆者が北京を訪ねるのは,この会議への参加で2回目になる.最初に訪れたのは昨年5月の1週間,やがて天安門事件に発展する学生デモが始まった頃であった.このときは初めて中国の事物に触れた新鮮な印象が,帰国してからは連日の中国関連の報道で,より強く印象づけられることになった.今回訪れてみて,町並みや人々の様子に,あの天安門事件の影響は全く感じられなかった,むしろ本会議の直前に開催されたアジア大会の影響で,北京国際空港の設備や係官の物腰などは1年半前よりも改善されていた.また街の中には世界友好親善などのアジア大会の標語ポスターが多く残されており,治安活動は全く目立たなかった.早朝から街の中央へと向かう通勤自転車の流れや,大勢の人で混雑している繁華街の様子,街の周辺のビル建設ラッシュ,一人っ子政策の下でこざっぱりとした服装をして大事に扱われている子供たち,どこの職場にも余分では無いかと思われるほどに配置された人々.旅行者の表面的な印象ではあるが,北京は1年半前と同様に国際的,開放的,そして活気に溢れていた.
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