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アジア太平洋外科組織保存学会(Asia-Pacific Association of Surgical Tissue Banking,APASTB)は1988年に設立され,1989年から年に1回,加盟国が持ち回りで学術集会を開催してきたが,1992年のフィリピンでの第4回を境に2年ごとに開催することになって今日に至っている.また第5回から欧米の組織バンクの会(米国組織保存学会:AATB,欧州組織保存学会:EATB)と合同で,国際組織保存会議(International Conference of Tissue Banking)として開催することになった.
2002年の学会は,韓国・ソウルのオリンピック公園内にあるオリンピックパークホテルで開催された.「日本骨・関節・軟部組織移植研究会」も中村孝志教授(京都大学)が主催された昨年の会から「日本運動器移植・再生医学研究会」と改名され,組織移植にとどまらず運動器の再生医学・再生医療を取り込んだ会に発展したのと同様に,APASTBでも2年前のバリ島における第8回の会議から組織再生についての研究発表が出てくるようになり,今回は再生についての発表が増えてきた.会議の内容は,アジア諸国の組織移植の現状,倫理規定や組織の滅菌・包装・記録の保存など組織の取り扱いに関するバンクの実際的な討議,同種骨や血管・羊膜の移植後の経過,生物学的・力学的観点からの臨床的・基礎的研究に関する発表は当然であるが,培養皮膚細胞・骨細胞・骨芽細胞・軟骨細胞,stem cell,臍帯血を用いた組織再生およびその担体に関する研究発表が増加したことが特徴的であった.特に韓国では培養皮膚を取り扱うベンチャー企業からの発表があり,既に産業界と研究機関が一体となって研究開発が進んでいることが印象的であった.反面,わが国からの参加者は北里大学とはちや愛知骨バンクのみであったのは寂しい.
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