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はじめに
膝関節の主たる機能は蝶番として大腿と下腿を連結し屈伸を安定して行うことであるから,膝装具基本的な構造は膝関節の屈伸軸に一致した一組のヒンジで,大腿部と下腿を体の外表部分で固定し連結する形態を持つ.このような膝装具は膝関節屈曲伸展が可能な状態で内外反のストレスに対して安定性を得る最も基本的ものとして使用されている(図1).
スポーツ活動時でも使用可能なように軽量でコンパクトに,しかも固定性をますために様々な工夫がされ,種々のデザインの膝装具が開発されており,それぞれの装具の特長や機能について様々に紹介されているが1),その選択に迷うことがしばしばある.特に最近前十字靱帯損傷が注目を浴び,積極的な手術療法が一般化するとともに,膝装具に対しても新しい工夫がなされて来ている.十字靱帯損傷を始め膝関節の不安定性が単に内側外側の側副損傷のみならず,多方向の損傷が考えられ,回旋不安定性に対しても,デローテイションブレイスのように回旋のコントロールの可能な装具が開発されている(図2).
膝関節の靱帯損傷に伴う治療法として装具療法を行う場合,それぞれの装具の適応からは適切な選択を行えないことが多い.どのような損傷をどの部分に受け,どのような外力に対して効果的な装具を処方するかを考慮し,膝の損傷のメカニズムを理解した上で,そのメカニズムに合った装具を処方し,良好な装着状態で機能させ得るかが重要である.
靭帯損傷の装具療法の目的には
1)アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいて,まったく靱帯損傷の無いものに対して,膝損傷の予防絹として用いる(Prophylactic Knee Brace).
2)膝の靭帯損傷が生じた場合に,当該靱帯機能が回復するまで安静を保ち,損傷靱帯の保護をする.
3)損傷が陳旧化した膝不安定性を示すものに,靭帯の働きを代用し,2次損傷を予防する.
4)靱帯再建術後の急性期に再建靱帯に対して強い応力の負荷が生じないようにする.
5)靱帯再建後の再損傷予防,などが挙げられる1).
Prophylacticなものの効果について諸家が疑問を述べているが2),我々が処方する機会が少ないので,2)以下の靭帯損傷用として用いられるものについて述べる.このような目的にあった装具を製作するためにはバイオメカニックスを理解する必要がある.
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