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1.はじめに
身体障害者福祉行政は,身体障害者の生活全般についてその更生と援護をはかるべきものであるから,これに関連する行政分野は極めて幅広く,ほとんど各省にわたり,厚生省内でも各局で分掌しているといってもさしつかえない.したがって,現在では関係法令も数十に及び,そのすべてを概観することには無埋があるので,ここでは,身体障害者福祉法(以下「法」という)に関する動向をみることにしたい.
わが国の身体障害者福祉対策は,昭和25年の法施行によってその一般的な制度がようやく緒についたといえる.
制度発足当時の骨格は,更生法を基本的性格とし,障害者の更生に必要な限度において特別な保護を行なうこととされた.すなわち,この法では労働年齢(18歳以上)にありながら一定の障害のため十分にその能力を発揮できないと認められた者(視力障害,聴力障害,言語機能障害,肢体不自由,中枢神経機能障害の5種の障害者)に,法の適用をうける資格の証明として身体障害者手帳を交付し,診査や更生相談を行なうとともに更生に必要な補装具を交付し,あるいは身体障害者更生援護施設に収容して指導訓練を行ない,これが終了すれば一般健常人に伍して社会に復帰する建前がとられた.行政体系としては,主として都道府県知事に対する国の委託事務という形式がとられ,専門的評価判定機関として身体障害者更生相談所が設置された.
その後,法の一部改正により,昭和26年には社会福祉事業法の制定に伴う援護の実施機関の調査と身体障害者の定義から「職業能力の損傷」を削除したこと,昭和29年には更生医療の開始や法の対象となる障害者の範囲を一部修正したこと,昭和33年には社会福祉法人が設置する身体障害者更生援護施設への収容委託制度を設けたことなどの措置がとられた.
また,関連制度としては,昭和26年に児童福祉法による障害児寮育指導の開始,昭和29年には同じく育成医療の開始があり,さらには,昭和33年の職業訓練法による身体障害者職業訓練所の設置,昭和35年の身体障害者雇用促進法および精神薄弱者福祉法の制定,昭和36年の国民皆保険皆年金制度の実現および世帯更生資金による身体障害者更生資金の創設,昭和38年の老人福祉法の制定,昭和40年の理学療法士および作業療法士法の制定などがあった.
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