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はじめに
頭部外傷の治療にあたっては,(1)その重症度の評価,(2)緊急手術が必要となる開放性脳損傷と頭蓋内血腫の早期診断,(3)脳損傷を二次的に増悪させる全身的な影響因子としての呼吸・循環,(4)脳損傷によって惹起される二次的増悪因子としての脳循環・頭蓋内圧亢進・脳代謝障害の評価,(5)頭部以外の合併損傷の有無とそれが脳の一次損傷に及ぼす影響などについて検討して,治療方針を得ることが原則である.
意識障害を伴う頭部外傷では,脳損傷が存在している.その脳損傷が一次性脳幹損傷であるか,圧倒的脳全体の挫滅である以外は,一次性脳損傷自体による死亡はない.重症頭部外傷による死亡の70%以上は,一次性脳損傷が図1に示すように,脳循環障害,脳浮腫発生,頭蓋内圧を亢進させ,これらの変化が脳をさらに障害するように作用し,遂には脳嵌頓を誘発し,二次的に脳幹障害を発生せしめて死亡する.したがって,治療にあたっては,一次性脳損傷を軽減させ,二次的に脳損傷を増悪する因子の発生を防止したり,その因子に対する軽減をはかることが,原則となる.
脳組織はそれぞれの部位に,定められた機能があり,脳組織はその損傷により,神経細胞は変性し,機能を失う.脳組織には再生機能もなく,脳組織には損傷脳の失われた機能を代償する作用もほとんどもっていない.頭部外傷により一次性ないしは二次的に傷害された脳組織は,グリア細胞による瘢痕化による治癒はいとなむが,障害された神経細胞は脱落するのみで,その機能の回復を望むことはできず,後遺症として症状を遺すことになる.これらの条件が他臓器における組織損傷後の変化と極めて異なる特徴的な現象である.
今回は,こうした特異的な病態形成をし,特徴的な損傷治癒過程を有する脳損傷の急性期の治療を中心に,治療方針と現在での治療効果について紹介したい.
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