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はじめに
リハビリテーション(以下リハビリと略)医療などにおける患者の長期にわたる診療録は,ややもすれば膨大な記載とデータの山積みとなる.医師はこのような患者を新たに診察する場合に,患者のかかえている問題点(患者の主訴を含めたリハビリ医療上の問題点)を把握しようとして,このような分厚い診療録を目のまえにして,どのように対処したらよいか気勢をそがれる場合が多い.
患者のもっている「問題点を中心としたカルテ記載法Problem-Oriented Medical Record(以下POMRと略)」は医療の目的を的確にとらえ,能率よく最良の医療を患者に与えることができるよう工夫がなされている.ことに,リハビリ医療においては,医師,看護婦以外にいわゆる“リハビリ・チーム”という他の専門職種の人々が一致協力して,患者のリハビリ医療にたずさわる必要があり,POMRを用いることのメリットは誠に大きい.というのも,POMRはL.L. Weed1)により提唱され,現在,米国,カナダのほとんどの大学病院,総合病院で用いられ,著者が留学していた,米国ミネンタ大学病院リハビリ・センターでも,1968年よリリハビリ医療に最初にとりいれられ2),その有用性を身をもって体験したばかりでなく,その後,1973年にミシガン大学医学部でリハビリ医学を教える機会を得たとき,このPOMRが医学生やレジデントを指導するにあたっても,いかに効果的であるかを別の面からも見なおすこととなったからである.しかしながら,L.L. Weedの提唱するPOMRを日本のリハビリ医療の中で利用するのには多少の工夫を要し,事実,慶大病院リハビリ・センターで,1974年に従来のカルテをこのPOMRに変えるにあたり,実際面に則した大幅な記載上の簡略化を行なわねばならなかったのである.
ここに,Weedの提唱せるPOMRの概念に則り,慶大病院リハビリ・センターで用いているカルテ記載法を紹介するとともに,POMRがリハビリ医療でどのような効果をあげつつあるかを報告する.
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