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編集後記
上田 敏
pp.762
発行日 1976年9月10日
Published Date 1976/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103636
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聴覚障害者のリハビリテーションの特集をお届けする.
本誌が創刊されてから満4年近くになるが,聴覚障害の問題をとりあげるのはこれがはじめてである.リハビリテーション,特に教育,職業,社会的な面のそれにおいては,聴覚障害者のリハビリテーションは,肢体不自由のそれよりもむしろ古い歴史をもつ分野でありながら,現代のリハビリテーション医学からはやや離れた分野ということもあってこのように遅くなってしまったのは残念である.しかし,それだけに編集上の貴重なアドバイスをいただき,かつ御執筆をいただいた堀口申作先生をはじめとして,多くの先生方の熱心な御助言がいただけ,大型の特集を組むことができた.船坂氏の医学的側面の詳細な紹介にはじまって,乳幼児における問題(吉野氏,村井氏),ろう教育(上野氏),ろう者の職業問題(野沢氏,成井氏),また大きな問題である中途失聴者の問題(関氏,高寺氏),その他,多面にわたる話題がとりあげられ,問題の大きさと複雑さをあらためて教えられた感がある.特に角田氏の論文では補聴器の装用といった一見きわめて実際的な問題が実は脳の左右の機能分化・分業という神経生埋・心理学の最尖端のテーマと結びついていることを教えられ興味深かかった.その他,遺伝(大倉氏),結婚(田中氏),字幕・手話付きテレビ(河合氏・他)などの論文,それに座談会(岡本氏・他)なども一層この特集を豊かにしていただいたと感謝している.
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