ひと
第19回日本医学会総会シンポジウム「リハビリテーション医学の現状と将来」を司会される国立療養所東京病院長同付属リハビリテーション学院長 砂原茂一(すなはら・しげいち)氏
上田 敏
1
1東大
pp.338
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103323
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砂原先生は四方に大きく枝をひろげた亭々たる大樹のようだ.とこう書くと「ハテナ」と首をかしげる人がいるかも知れない.なかには口の悪いのがいて,「どうしてあれが大樹なものか.会が一寸ダレてくるとすぐに貧乏ゆすりをはじめるし,自分の用だけ済んだら電話はすぐにガチャンだし,会が終ったとたんに雲を霞と消えてしまうし,あんな落着きのない大樹があるものか」などと憎まれ口を叩くかもしれない.まあ私なども,時にはそんな悪口も言いかねないが,それは英語の“just pulling his leg”といった悪意のない冗談であって,むしろ尊敬と親しみの逆説的な表現なのである.
実際砂原先生ほど幅の広い人もめずらしい.長年のあいだ結核病学のトップを歩きつづけながら,いわばその太い幹から沢山の新しい枝を延ばし,それらをも大きく育てあげた.結核のリハビリテーションからリハビリテーション医学とPT・OT教育を育て上げたし,結核化学療法の検定から始った「臨床薬理学」という新しい学問の建設も,ヒドラジッドの代謝型の人種差の発見からはじまった人類遺伝学への貢献もみなそれぞれの大きな枝である.最近では「医療過誤問題」という枝も出したらしい.「臨床医学の論理と倫理」という名著の表題が示すように,医学界切っての思想家でもある.たえず伸びつづけ豊かな稔りをもたらす大樹―それが彼である.
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