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ジョン・J・フルーイン著(長島正充訳):歩行者の空間
今田 拓
1
1宮域県拓杏園
pp.248
発行日 1975年3月10日
Published Date 1975/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103303
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リハビリテーションに対する工学サイドよりのアプローチが盛になり,身体障害者のための建築計画や,社会環境問題への提言がとりあげられつつあることは関係者にとって喜ばしいことである.しかし東京の国電の朝のラッシュに身を委ねると,とても身障者どころではなく,必死に踠いている建常者の中に自分自身を発見し,身障者のためのなどというフレーズは遠い国の話になってしまう.何故人間が過密の中で移動させられるのか,考えても無駄なのか,誰も考えなかったのか,ともかくあまり考えていないことだけは確かのようである.
“Pedestrian.Planning and Design”―「歩行者の空間」と訳されているこの新刊書はリハビリテーション関係者という立場から大いに考えさせられた貴重な文献である.著者フルーイン氏は交通工学の出身で,歩行交通の問題を中心にニューヨークのポートオーソリティーと密接に関係しながらコンサルタントとして活躍し,数少ない歩行交通専門の研究者の1人であるという紹介がある.訳者の長島氏は東大工学部の出身で丹下健三都市建築設計研究所主任を経て,現在長島建築研究所代表,都立大,日大の講師という肩書き,共同訳者の奥山,古磯両氏はともに建築工学出身の丹下研究所員,対木氏は交通工学の専門家である.
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