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3月号をお届けする.数年ぶりの厳寒,裏日本の豪雪という自然の猛威に加えて,人為的な物不足,買占め,悪性インフレの波がかぶさった厳しい冬も,春の訪れとともに自然の面だけはどうにかすこしはゆるみそうな気配である.しかし社会的な面はまだまだゆるむ気配はない.「紙不足」の波は本誌にもかぶさって,近く減ページのやむなきに到った.障害者へのしわよせもきびしくなっている.公害問題をきっかけに数年前からあちこちに吹き出していた「高度成長」の隠れた合併症が,わずかな外圧の刺激で一挙に重症化して,日本経済は今や手のつけようのないdown-hill courseの重病人になってしまった感がある.よほど思い切った大手術をして,その後のプログラムを綿密かつ積極的に進めていかないことにはとてもリハビリテーションはおぼつかないと思うのは筆者だけではあるまい.
さてこんな状況にタイミングを合わせたわけでもないが本号は「リハビリテーション行政」の特集である.およそ障害者のリハビリテーションにたずさわったことのある人なら誰でも感じたことがあるように現在の日本の行政には障害者の真の自立を助ける面よりもむしろそれを妨げる面の方が目立つことさえある.手塚氏の論文の冒頭にあげられているI氏の言のように,日本の制度は上から整った形で全国一律に与えられるが,地域のニードや障害者の立場に対応しているかどうかはなはだあやしい,というのがおそらくもっとも本質的な点の指摘であろう.村川氏,橋倉氏のそれぞれの論文,土屋氏司会の座談会にも具体的な例を通して,行政の貧困が詳しく指摘されており,貴重である.今後の課題はこのような現状の分析をより広い分野についてもおこないつつ,行政のあるべき姿に対するわれわれリハビリテーション担当者の立場からの具体的なビジョンを打ち出していくことではなかろうか.
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