Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
林武の『美に生きる』―パニック障害の克服
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.506
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102080
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林武(1896-1975)が昭和40年,69歳の時に発表した『美に生きる』(講談社)には,貧窮のなかで牛乳配達やペンキ絵売りをしながら21歳にして画家を志したという苦難の人生が描かれているが,そこには彼がパニック障害や胃潰瘍を克服した過程も描かれているため,文字通り病みながら生きた画家の自伝としても興味深い作品である.
林武は,20代後半に「恐怖的な神経症」に襲われた.それは,「極度の不安と恐怖の発作」からなるもので,高いところに登れば飛び降りようとし,往来へ出れば大声で叫びたくなった.林武はその頃の状態を,「自分の脳組織がいまにも潰滅し去るかのように思われた」と語っているが,彼の症状は有名な脳病院に行っても治らなかったという.
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