巻頭言
“紙の力”words, words, words…
藤原 俊之
1
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
pp.417
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101762
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ニューミレニアムも10年目となった.この10年の変化として感じるのは,電子媒体の発達である.以前は,論文を手に入れるには大学の図書館まで足を運び,探し求める文献を引っ張りだして,コピーをするのが当たり前であった.それが今では,ほとんどの雑誌がオンラインで電子媒体として取得が可能となり,自分の机の上のパソコンから自由自在に論文を検索することができる.逆に自分の書いた論文も,世界中で目にされることが可能となり,世界との距離はますます近くなっている.臨床でも,ガイドライン,EBMの実践がとかく言われ,常に最新の論文にあたらねばならない頻度は確実に増えている.研究,臨床においても論文の重要性は増す一方である.
私が最初に原著論文を書いたのは,奇しくも本誌である.当時の先輩からは,「研究をしたら,必ず論文にすること,論文にして初めて研究は完成する」と厳しく指導されたことを思い出す.昨年,知の巨人として知られ構造主義の父と言われるレヴィ・ストロースが亡くなった.彼はその著作において,「文字の出現は人類に大きな変化をもたらした.文字を持つことにより人類は知識を保存することが可能となり,それにより人間の才能は著しく増大した」と述べている.“紙にする”,“論文にする”ことは,われわれの知識を保存し,積み重ねていくために,非常に重要なことである.この知識の積み重ねなしには,現在の医学の進歩はなかっただろうし,今後の進歩も望めないことは明らかである.
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