Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ドルトンの『色覚に関する異常な事実』―知的関心の対象としての障害
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.484
発行日 2005年5月10日
Published Date 2005/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100105
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ドルトン(1766~1844)は,近代原子論の父として有名な化学者であるが,彼が1794年に発表した『色覚に関する異常な事実―観察記録』(井山弘幸訳,『科学の名著第Ⅱ期6』所収,朝日出版社)は,ドルトンが自らの赤緑色盲という障害に基づいて書いた論文として興味深い論文である.
『色覚に関する異常な事実』ではまず,「あまり口にしたことはないのだが,私は,多くの色の名称は無思慮な形でつけられている,という意見を常々抱いている」というドルトンの不満が語られる.ドルトンは「桃色のかわりに赤(red)という語を用いるのは,大変不適切であると私は思った.私の理解では,青(blue)なら桃色のかわりになるはずだ.つまり,桃色と青は,私にはほとんど同じように見え,その一方,桃色と赤は互いに似ても似つかないからだ」と,自らの特異な色彩体験を語るのである.
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