連載 今月の深めたい理学療法周辺用語・第1回【新連載】
Multimorbidity—多疾患併存
菊池 徹哉
1,2
,
藤沼 康樹
1,2
Tetsuya KIKUCHI
1,2
,
Yasuki FUJINUMA
1,2
1生協浮間診療所
2家庭医療学開発センター東京
pp.86-87
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551203320
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はじめに—Multimorbidity(多疾患併存)とは
Multimorbidity(多疾患併存)とは,2つ以上の慢性疾患が併存し,診療の中心となる疾患の設定が難しい状態のことをいう.日本の成人における多疾患併存の有病率は29.9%で,65歳以上の高齢者では62.8%にまで上昇しており1),高齢者では多疾患併存の割合が高くなってきている.
多疾患併存と似ている概念として,併存症(comorbidity)や合併症(complication)がある. これらは,中心となる疾患が存在し,それに関連する症状や状態のことを指している点で多疾患併存とは異なっている.
さらに,よりケアの必要度が高い患者を特定するために,complex multimorbidity(慢性疾患が3つ以上併存)やmultiple functional limitation(MFL)という概念もあり,特にMFLは「90m歩く」,「2時間座る」などADLや症状などの項目が含まれている. これは同じ慢性疾患でも高血圧症と関節炎では,日常生活への影響が変わるためである2).また,孤独感や社会的孤立,経済的困窮,教育水準の低さなど心理社会的側面も多疾患併存との関連があり3),今後は多疾患併存の定義に影響する可能性がある.
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