連載 とびら
安全な理学療法のための心得
関 公輔
1
1いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部理学療法科
pp.1389
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551203267
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理学療法士がかかわる医療安全に関連する事案の代表として,転倒・転落が挙げられる.運動機能が低下している対象者に働きかけるさまは,まさにリスク管理の何物でもない.経験上,その状況に遭遇し,ヒヤリしたことも多かった.それらの経験を踏まえ,理学療法という専門特性から,広く医療安全の概念を理解することで,どのような視点で見ていくことが重要か考え方が深まったように思う.本稿では,臨床で必要な医療安全のスキルとその質に触れてみたい.
日本医療機能評価機構医療事故情報収集・分析・提供事業2021年報によると医療事故の発生要因の約34%が,「確認・観察・判断を怠った」という結果であり,ヒューマンファクターや環境・設備要因よりも圧倒的な事故要因となっている.この要因は,ノンテクニカルスキルと称され,普段何気なく失敗する「エラー」が,専門的技術であるテクニカルスキルの事故よりも多いという結果である.このことを自動車運転に譬えると,運転技能が未熟なときは,「予測,確認,注意,認知,判断」を顕在化させることで,「不慣れな運転」を補完し,安全なドライブを可能とするが,技能が熟達し,無意識に操作パターンが形成されると,2つのスキルが冗長性をもち,互いに協調することで,パフォーマンスの定常化が図られていることに気づく.
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