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来日12年—留学生から病院理学療法士までの道
来日して12年になった.父が日本で研究活動をしていたため,小さい頃から日本を何度か訪ねたことがあり,ここで生活してみたいと思い,母国である台湾の大学を卒業してすぐ日本に渡航した.最初は語学留学のつもりだったが,超高齢社会である日本のリハビリテーションのあり方がそうなりつつある台湾にとって参考になることが多いと思った.脳卒中や肺疾患に罹った家族もいて,元々理学療法に関心をもっていたため,日本語能力は五十音程度だったが日本の大学へ進学することを決めた.
日本語学校で1年半ほど語学勉強と留学試験の準備をしながら,文章の練習は毎日3時間行い,口語の練習は日常から外国人友達同士でも日本語で話す工夫をしていた.その後,名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻に進学した.しかし,さらなる挑戦が待っていた.母語である台湾華語には漢字しかないため,漢字の読み書きは私からみて簡単だが,訓読み・音読みの使い分けや片仮名は難しい.それで専門用語を覚えるのは困難だった.さらに,教科書のような標準語と異なり,「生の日本語」の聞き取りに苦労した.幸い,大学で優しい先生方と同級生に出会えた.先生方は授業の録音をさせてくれたり,質問に対してわかりやすく説明してくれたりした.同級生は今時の言葉を教えてくれたり,毎週のように一緒に勉強して授業メモを合わせたりしてくれた.最も忘れられないのは,実技試験だ.専門用語を思い出しながら模擬患者にわかりやすく説明して実技を行うというマルチタスクが私にとって非常に難しかった.よく言葉でつまずいた私に,同級生が台本までつくり,何回も練習に付き合ってくれた.大変な実技試験もよい思い出になった.
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