書評
—熊井 司,片寄正樹(監修)/小林 匠,窪田智史(編集)—「軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション—組織特性に基づくアプローチ法の構築」
成田 崇矢
1
1桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部スポーツテクノロジー学科
pp.796
発行日 2021年7月15日
Published Date 2021/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551202372
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軟部組織損傷・障害は臨床の場で遭遇する頻度が高く,また,手術適応ではなく保存療法が選択されるケースが多い.したがって,各施設によってプロトコルが整備されている術後リハビリテーションとは異なり,理学療法士をはじめとするセラピストの思考力や判断力が日々試される疾患であるともいえる.しかしながら,その病態やアプローチ法は十分に体系化されておらず,治療者個々の経験や断片的な情報を組み合わせたアプローチが行われてきた結果,多くの理論や治療法が世の中に溢れている.何が正解なのか,不安を抱えながら軟部組織損傷・障害からの問いかけに答え続けているセラピストが多いのが現状ではないだろうか.
そのような現状に対し,本書は軟部組織損傷・障害の治療に向けた羅針盤になりうるというのが読後に抱いた第一印象である.もちろんこれは,監修・編集の先生方,そして執筆された先生方の,不安を抱えるセラピストに筋道を示したいという強い想いが結実したものと推察する.巻末に50ページにわたって掲載された文献リストを見ても,1つ1つのエビデンスを積み重ね,真摯に1冊の本をつくり上げたことが感じ取れる.
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