とびら
変わらざるべきこと,受け継がれるべきこと
及川 龍彦
1
1岩手リハビリテーション学院
pp.867
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201649
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筆者は岩手県の養成校教員を務め二十数年を迎えるが,最近,学生に喜びを覚えた経験があった.本学では国家試験学習にあたり,学生によるグループワークを取り入れている.メンバー構成は担任が行い,学生同士の関係や成績などの面から構成にはいつも苦慮するのだが,このときは成績不振者の学習効率向上を目的にクラスのなかでも優秀な学生を組み込んだ.当該学生はグループでの学習進行に相当の努力を要したが,それでも周辺学生の成績向上に大きく寄与した.本来,メンバー構成の理由は学生に伝えないが,本人の努力に敬意を払う意味もあり,面談で当該学生に担任が求めていることを説明した.その際,本人からは担任の意図は説明されなくても理解していたし,周りの学生の学習効果が向上している実感があるとのことだった.若者間のコミュニケーションが希薄だと言われるこのご時世に他者の意図を汲み取り,他者に貢献しようとする姿が嬉しく,変わらずにいてほしい学生の姿であると感じた.
話は変わるが,筆者が理学療法士免許を取得して間もない20歳台の頃は諸先輩方に食事をごちそうしていただく機会が多く,そのときには職務の責任や社会貢献など多くのご指導をいただいた.食事の後には「おまえがこの立場になったら,同じことを後輩にしてやれ」とよく言われたものだった.恥ずかしながら状況は今もあまり変わっていないが,後輩との食事ではこの言葉を実践するよう心がけている.いつも思うことは後輩を思いやる気持ち,われわれのあり方を脈々と伝えようとする姿への尊敬であり,これを受け継いでいきたいと普段から思っている.
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