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はじめに
近年児童発達支援の枠組みが拡大し,放課後等デイサービスや訪問リハビリテーションなどで,発達障害に対して理学療法士による支援に社会的ニーズが高まり,理学療法士の間でも発達障害に関する知識の修得は切望されている.このような背景のもと,発達障害に関する書籍1,2)は数多く出版され各雑誌でも特集を組まれるなど,発達障害の各論や指導・支援法については知識を得ることができるようになっており,筆者の及ぶところではない.
ただ,理学療法士の興味は協調性運動の支援に関することが圧倒的に多いため,その運動支援をすることで子どもの「こころ」や環境とのかかわり方がどのような変化をもたらすのか,さらに理解を深める必要を筆者は感じている.なぜなら,発達障害の特性によって日常生活の困りごとはライフステージごとで顕在化し(図1),特に思春期以降に気分偏重やうつ,対人関係障害などさまざまな精神症状を呈するからである1).
発達障害児者では,相手の行動を脳内でなぞり,相手の考えを理解し共感するために不可欠なミラーニューロンという神経細胞群の活性が低いとされ,脳の生来的な脆弱性のためにストレス耐性が低く,ごく些細なストレスや心理的要因でも大きな反応を起こすことがある3)と言われている.これら二次障害の現れ方は,発達の時期によって変化するものであり,乳幼児期では虐待の問題,学童期では学習困難,いじめ,不登校,思春期では引きこもりや触法行為,成人期では転職,抑うつなどが特徴的に示されやすい4).加えて,言語発達の観点から心の成長を読み解くと,知的障害の有無にかかわらず,彼らはそれを言葉で表現することが得意とは言えないため,その状態を把握することは難しい.したがって彼らの行動や発言を見聞きしつつ,不適応な症状が出ていないかをチェックすることが大切である.最近では当事者自身が自己理解を深める当事者研究5,6)が報告され,当事者自身の著書7〜9)も多く出版されており,彼らの内面を理解する手がかりとなっている.また筆者は,特別支援学校に勤務していた関係で,地域校支援や特別支援学校(知的障がい部門)での支援のなかで,多くの発達障害の特性を有している児童・生徒の指導に当たった.その経験から,本稿では,幼少期から青年期への「こころ」の発達と脳機能への理解を深めることで,青年期に出現してくるであろう課題を整理して示したいと考えている.
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