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書評 —藤野雄次●編/松田雅弘,畠 昌史,田屋雅信●編集協力—「そのとき理学療法士はこう考える—事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた」
諸橋 勇
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1いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部
pp.71
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201094
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本書の帯に書いてあるように,「根拠もわかった.理論も学んだ」,そして先輩の行っていることを毎日見ていても,臨床においてうまく理学療法を行えていない理学療法士は多いと思います.そこで“根拠や理論を得ることと同時に必要なことは何か”という問いが出てきます.昔から理学療法はサイエンスの部分とアートの部分があると言われてきました.近年は前者が強調され,先輩理学療法士の経験値が後輩に伝承されているとは言い難い状況にあります.理学療法は情報収集,問題点抽出,統合と解釈,目標設定,治療計画の立案・実行,検証の一連のプロセスで進められます.このなかには経験値から導き出された「勘」「コツ」「知恵」などがたくさん含まれています.そして,このような経験値,臨床感の部分が言葉や文章にされることが少ない印象です.「なぜ,あの理学療法士はあんな運動療法の展開ができるのだろうか」「頭のなかでどのようなことを考えているのだろうか」と思った経験は誰にでもあります.そんな疑問に答えようと出版されたのが本書なのだと思います.
本書は,第1章では理学療法士の在りかたに触れ,第2章では思考過程でもあるクリニカルリーズニングの要点が述べられ,第3章ではリスク管理,第4章では中枢神経疾患,運動器疾患,内部障害,神経筋疾患などの評価について,第5章では理学療法士が苦手としている統合と解釈に関して丁寧に解説されています.そして,最終第6章では本書の最大の特徴とも言える多数の疾患の事例報告が61例紹介されており,臨床の第一線で活躍されている錚々たる理学療法士が,自らの経験値を簡潔に言葉にして伝えています.
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