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はじめに
この数年,「安全・安心」という言葉や表現が非常にクローズアップされるようになった.特に2011年の福島第一原子力発電所の事故は大きな衝撃とともに,いま一度自分たちの生活における安全性を考える機会になったのではないだろうか.医療における安全性がクローズアップされたのは1999年に発生した手術患者の取り違え事故に始まり,2000年前後に医療事故により患者が死亡に至る事例が立て続けに発生したことによる.このときにマスメディアが大きく報道し,世間では驚きとともに医療に対する不信感や疑念が高まり,大きな社会問題となった1).そして医療安全が社会問題になったことを契機に,2001年,厚生労働省に医療安全推進室が設置され,以来,医療安全の土台となる法整備の拡充や,各医療現場での医療安全に向けた取り組みが推進されてきた2).このように,医療事故の問題は,医療分野の抱える大きな問題の一つとなっている.
医療の高度化・複雑化が進み,医療現場の業務はわずかな間違いでも対象の傷害に直結するような医療行為が増加している3).リハビリテーション医療も患者の身体に少なからずストレスを与える技術であり,医療事故が発生する可能性は十分にある.むしろ人口の高齢化,急性期の状態不安定症例,外科手術直後の超急性期におけるリハビリテーション,回復期や慢性期においても呼吸器・循環器疾患併存症例等,ハイリスク症例の増加に伴い,医療事故のリスクが高まっている背景がある4).このように,安全管理は医療従事者として職種を問わず取り組むべき問題となっている.しかしここで重要なことは,安全は一朝一夕でできるものではなく,むしろ実用的な対策を継続していくことによって徐々につくられるものであるということである.そこで本稿では,医療安全の基本的考え方やその重要性について説明する.
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