甃のうへ・第7回
お互いさまの気持ちをもって,日々の活動にいそしみたい
大槻 かおる
1
1大和市立病院
pp.914
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106445
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昭和58(1983)年秋の夕方,広島宇品港から江田島切串港行きのフェリーに定期券で乗り込んだ私は,そのまま2階への階段を上がった.そこは一面畳敷きの大広間になっており,大勢の会社帰りの男女が,所狭しと座り込んでいる.手招きされるまま1人分空けていただいたスペースに腰を下ろすや否や多くの手が私の背中に伸びて,おぶい紐をほどく間ももどかしく8か月の長女は大広間一巡の旅に出る.長女の通るところに湧き上がる「○ちゃん,可愛いね」「○ちゃん,今日もお勤めご苦労さま」「○ちゃん,お帰り」を聞きながら,周りの人と子育てのことやレシピの伝授,世間話やわがことのように語られる広島カープの選手の話などを聞くこと30分.長女が背中に戻され,おんぶを手助けしていただいて下船する.「さようなら,また明日」と声掛けされる長女になりかわって「さようなら」と挨拶する私.
そこでつくづく思ったのは,子どもとは保育園はもちろんだが,多くの人によって育てられているということ.私自身も職場はもちろん,それ以外でもさまざまな場面で多くの人に助けられているから働く母親ができるのだなあ,ということ.
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