とびら
言葉は意識的に
山田 さゆり
pp.859
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106430
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理学療法士免許を取得してから30年になります.何年経っても難しいことは難しく,できることが増えればさらなるできないことに気づかされます.脳卒中の運動学習では,努力的で意識的に行っていることから自動的に行えることをめざしますが,言語的コミュニケーションは,どうも自動的(反射的)では問題が生じるようです.例えば怒りをコントロールしながらのコミュニケーションでは,まず反射的に対応せず意識的に対応できる時間まで数秒引き延ばすようにと,アンガーコントロールのトレーナーが語っていました.また,双方の意見が食い違うときの合意形成は,どちらが正しいかを決めるのではなく,相手とこちらの両方が納得できるところを探る作業です.ここでは,自分のみならず,相手の価値観や聞き取り能力,共感力にも左右されます.現状確認の言葉が相手の評価や欠点を指摘していると伝わり,難しさを感じていました.
そのような折,ある人から『NVC』(nonviolent communication:非暴力コミュニケーション)1)という本の贈り物がありました.NVCの構成要素は,① 観察,② 感情,③ 必要としていること,④ 要求です.観察と評価を切り離し,感情と思いを区別すること,感情のおおもとにある自分が必要としていることを,相手に具体的で肯定的な行動を促す言葉で要求することを勧めています.言葉は「人生を豊かにするために使っている」ととらえると,おのずと話し方,切り口,選ぶ言葉が違ってきそうです.
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