講座 最新電気生理学・2
脳磁図(magnetoencephalography; MEG)の臨床応用―現状と理学療法における有用性
川上 治
1
,
金桶 吉起
1
,
柿木 隆介
1
Kawakami Osamu
1
1岡崎国立共同研究機構生理学研究所統合生理研究施設
pp.359-364
発行日 2001年5月15日
Published Date 2001/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105806
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1.はじめに
脳磁図(magnetoencephalography;MEG)は,脳磁場測定装置(脳磁計と略称される)を用いて脳内の磁場活動を記録するものである.近年急激に発展し,現在世界で50台以上の大型機器が稼働している.基礎神経科学分野においては機能的MRI(fMRI)やポジトロン断層撮影(PET)とならんで脳磁図の研究は高い注目を集めている.
脳磁図は,脳波(electroencephalography;EEG)を基本的に応用したものであるが,脳の神経活動に伴うわずかな磁場をとらえるためにさまざまな高度の技術が用いられている.脳磁図を測定するには脳波とは比較にならないほどの規模の設備と費用が必要である.このようなコストパフォーマンスの悪さもあり,脳磁図が臨床分野において十分に普及しているとはいえない.
脳磁図の研究が本格的に開始されてから20年以上が経過した.更に,30チャンネル以上の大型機器が登場して約10年,全頭(ヘルメット)型の機器が開発されてから7年が経過しようとしている.脳磁図の研究は,長い準備期間を経て発展期に入ろうとしている.日本でもこうした大型機器が20台以上も稼働している.特に大学病院,精神神経疾患専門の病院での設置数が増加しており,脳磁図の臨床応用の可能性についての今後の報告を世界中が注目している.現在,臨床分野で脳磁図が盛んに用いられているのは,「てんかん」と「脳神経外科」分野である.
本稿では,脳磁図の原理,特徴を簡単に述べたうえで,臨床応用についての研究をいくつか紹介する.
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